高松高等裁判所 昭和40年(ラ)70号 決定 1965年12月13日
抗告人 村山義男(仮名)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告理由の要旨は、要するに、抗告人の本件戸籍訂正許可申立(以下本件申立という)の趣旨および実情は、原審判の摘示するとおりであつて、それによれば、抗告人指摘の戸籍の記載は明らかに誤りであり、当然訂正が許可されるべきであるのに、これを却下した原審判は失当であるから、これを取消し、本件を原裁判所へ差し戻されたい、というのである。
よつて按ずるに、本件申立は、抗告人の三代前の戸主村山平吉が明治一〇年八月一五日死亡したことにより、同人の長男(慶応四年死亡)の長男孝男(抗告人の父)が家督相続するのが筋道であるのに、平吉の三男元男が明治一〇年一〇月二〇日相続して戸主となり、孝男は後に分家したような戸籍の記載がなされているのは誤りであるから、右戸籍訂正の許可を求める、というのであつて、戸籍法第一一三条により、家庭裁判所の許可を求める申立であることが明らかである。思うに、本条による戸籍訂正の許可は、訂正事項が軽微で親族法上相続法上の身分関係に重要な影響を及ぼさない場合か、または戸籍の記載自体から記載事項が法律上許されないことの明確な場合に限り許さるべきであつて、そうでないものは戸籍法第一一六条の確定判決による訂正申請によるべきものと解するのが相当であるところ、もし本件申立が許容せられて戸籍の記載が訂正されるとすると、利害関係人の身分上財産上に重大な影響が生じるし、また本件は古く明治一〇年の事にかかるものであつて、当時は、戸籍制度が完備せず、単に戸口調査的な性格の戸籍が存したに過ぎないのであるから、抗告人指摘の戸籍の記載が法律上許されないことが、戸籍の記載自体から明確な場合にも当らない。したがつて、本件申立は許さるべきではなく、これを却下した原審判は相当であるといわなければならない。
よつて、本件抗告は理由がないので、家事審判法第七条、非訟事件手続法第二五条、民事訴訟法第四一四条、第三八四条を適用して、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 浮田茂男 裁判官 加藤竜雄 裁判官 山本茂)